前回までのあらすじ
ピカピカになるため、友の命を差し出せるか。
「そこまでして勝たなくてもいいじゃねぇか」とそそのかす「自分達」の声を振り切ろうとする獅子神。
そんな中、1匹のキツネは「そんなに自分が嫌いなのかよ」と声を掛けるのであった。
本編あらすじ
第16ラウンド。
このラウンドで黎明を殺す覚悟を決めなければ、獅子神は勝利する事はできない。
正確には、このラウンドで黎明に「ハート」「たいまつ」両方を渡さない、という完璧な読みをせねばならず、そんな離れ業を成すためには「殺す覚悟」から逃げる事はできないのだ。
「これが最後の読み合いだ だから1つ質問するけど」
「どうしてお前は いつも辛そうに戦う?」
何を当たり前の事を聞いてくるんだ、と獅子神は戸惑う。
戦いにおいては出来ないことばかり現れるから、弱い自分を叩き上げて何もかもを変えなきゃ───
『神の声を聞け』
『強い者が勝つ理由は 千差万別なのだ』
『君は君らしく 君のままで強くなりなよ』
友の言葉が頭を駆け巡る。
だが、「自分」がそんな獅子神を蹴りつける。
『なぁに甘いコト考えてんだテメー』
『そうやってすぐ逃げるから オメーはピカピカになれねぇんだ』
『苦しんででも殺せ!! 怖ぇモノを見つめるんじゃなかったのか!?』
『何もかも足りねぇんだから 何もかも変えるしかねぇだろうが』
「本当か?」
確かにオレは弱くて、ピカピカには程遠い。
だが。
「難しいことって 苦しみながらやらなきゃダメなのかなぁ」
全ての他人がオレに何かを教えてくれる。
なのになんで見逃していた?
「ピカピカな奴らは いつも笑いながら戦ってる」
獅子神は黎明に勝ちたい。
そして黎明を殺したくない。
そんな都合の良い甘えは捨てなければいけない、と思っていたが───
「そのワガママを通せる奴を ピカピカって呼ぶんじゃねぇか」
獅子神の言葉に、黎明は嬉しそうに口を開いた。
「やっぱりお前は もっともっとオレを魅せる」
5分間の思考。
やる事は今までと変わらない。
目線を追い手の動きを見、声を聴く。
穴が空くほど敵を見つめ、事実と合わせ相手の手を予測する。
だが、目的が違う。
怖ろしい敵を殺すためではなく、憧れるほど眩しい友を生かすため。
目的が変わり、苦しまないことを恥じなくなった”自称”弱者は、ピカピカ達の笑顔の理由を理解した。
───オレの悩みと迷った道が 落胆じゃなく発見になる
自分を蹴飛ばしてばかりいた足を、歩くためだけに使い。
自分に聞かせていた罵声とため息を、激励と歓声に変える。
義務を権利に、課題を希望に、不安を自由に。
誰かに笑われない為ではなく、
自分が大笑いするために、自分の命を使え!!!
「両プレイヤー選択完了!!」
「果たして運命はどちらに微笑むのか!? 16ラウンド結果は───」
「オープン!!」
【門番】黎明 | 歓迎 | 居眠り | 鉄壁 |
【旅人】獅子神 | ハンマー | ハート | たいまつ |
【門番】黎明のスコア | ハート-1×2 | ハート+1 | 変化なし |
「どうだ? オレもなかなかやるモンだろ?」
獅子神の表情は、晴れやかな笑顔だった。
感想
完璧な読み!!!
たいまつを渡さず、ハートを渡さない=ハートを減らす。
獅子神さんが、何のハンデもなく、純粋に黎明くんの読みに勝った…!
わぁあああああああああああああ!!!
今回は最初から最後まで「人生のバイブル」
強くなるためには、苦しまなければならないのか。
本当に?
難しいことは、苦しみながらやらなければダメ?
都合の良い、そんなワガママを押し通せる奴を、ピカピカと呼ぶのではないか。
ほあ────────────!!!
獅子神さんの目的が「殺す事」から「生かす事」になった途端、やっている事は全く同じなのに、世界の見え方まで変わってしまいました。
悩んでいた事や迷っていたことが、落胆から発見へ。
誰かに笑われない為ではなく、自分が笑うために自分の命を使う。
……
すごいなぁ…。
本当に、今回の話には特別感銘を受けていて、というのも「難しいことって 苦しみながらやらなきゃダメなのかなぁ」が、私自身最近よく考えているテーマだからです。
朝、楽しく通勤電車に乗り込んでいる人はほとんどいないと思います。
仕事は苦しいもの。
だって皆そうだし。皆やってるし。
苦しい思いをしなきゃお金もらえないし。
でも本当にそうなんでしょうか?
ごく僅かかもしれませんが、楽しく仕事をしている人だって絶対にいるはずです。
楽しく仕事をしている人達=ピカピカに、自分たちがなれないなんて事は、ないのではないでしょうか。
ところで獅子神さんの長考文
全部読めた人、コメントでぜひ自慢してください!